中学・高校数学を厳密に議論する(複素数の四則演算 編)

数学Ⅱでは初めて複素数を習います。教科書を読むと、次のように書いてあります。

「一般に、複素数の四則演算の結果は、次のようになる。

加法(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i

以下省略」

これは性質のような書き方をしていますが、実際にはこれは演算の定義です。

まず、「複素数をa+biという書き方をする(a, bは実数)」と言うところから議論がスタートしますが、ここでの記号+はこの段階で特に意味を持ちません。実数同士の+(実数体における加法の演算)については既知のものとしていても、biは実数ではないからです。

「実数a, bに対して、形式的にa+biと表される数を複素数といい、複素数全体の集合をCと表す。C∋a+bi, c+diにおいて、演算+と×を

(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i,   (a+bi)×(c+di)=(ac-bd)+(ad+bc)i

と定めると、Cは演算+, ×において体をなす。そこで、Cを複素数体と呼ぶ。」

というのが本来です。これを用いると、i^2すなわちi×iが-1となることが導かれます(a=0, c=1のとき単にiとかく)。

また、a, bを実数とし, aとbiを複素数の演算として考えると

(a+0i)+(0+bi)=(a+0)+(0+b)i=a+biとなるので、演算の定義によって初めてa+biの+と複素数体の演算としての+を同一視出来ることが分かります。実数体の演算としての+とも同一視出来ることも同様に分かるので、特にこれらの+を意識的に区別しなくても問題ないことが分かります。

複素数の四則演算だけでなく、高校数学の教科書で定義と定理の言い回しを曖昧にしているものは多いです。この他に、不定積分などは良い例だと思いますが・・・

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