中学・高校数学を厳密に議論する(有理数の表記 編)

 今回の記事は若干タイトル違いかもしれません。中学・高校数学の曖昧さを指摘するというよりも、かなり細かいことで気になったことを書いただけになっています・・・

 大学生の頃、アルバイトで塾の講師をしていたときの話です。ある生徒が学校の定期テストを終え、見直しのためにと塾に持ってきました。その生徒の答案とそれに対する採点を見て、疑問に思ったことがありました。数学Ⅰの「集合と命題」の単元の背理法を用いた証明問題だったと思うのですが(問題文は忘れました)、生徒が「qを有理数と仮定すると, q=a/b (a, bは整数)とかける.」と記述していました。それに対して、 b≠0と書いていないからという理由で減点されていた(実際、問題集などの解答を見ると、b≠0と書いてあるのが一般的です)のですが、私は、数学的に減点される理由がないと感じました。

 「q=a/b (a, bは整数)とかける」という言い回しは、「ある整数a, bが存在して, q=a/bを満たす」、つまり「q=a/bとなるような整数a, bが存在する」ということを主張しているにすぎません。あくまでこの主張の述語は、「存在する」です。存在を主張している以上、b≠0というのは条件をきつくしているだけです。「b≠0を書かなければいけない」と言うのは、「b>0を書かなければいけない」と言うのと同じであるように思います。q<0であったとしても、a<0とすればよいので。もちろん、b≠0と書いて減点されることはありませんが、b=0と書かなければ減点はおかしいと思うのです。

 もし、「qを有理数と仮定すると, qは集合{a/b| a, bは整数}の要素である」と書いたら、減点されるのは分かります(こんな書き方はしないと思いますが)。有理数全体の集合を明記するために、b≠0という条件は必要なので。「qを有理数と仮定すると, q=a/b (a, bは整数)とかける.」という記述が不十分という考えは、どうも「qを有理数と仮定すると, qは集合{a/b| a, bは整数}の要素である」という記述が不十分であることと混同しているように思います。

 とても細かい話かもしれませんが、もし数学的な間違いや議論不足が無いのに試験で減点されているのであれば、これは考えるべき問題だと思います。もちろん、生徒に上述した有理数の表記の仕方の違いを理解させる必要はないと思います。しかし、採点する側(教師側)の立場にすれば、形式的な採点(「ここでの記述の仕方はこの文言を書くのが普通だから、一字一句間違えずに書けないと減点」などのような採点)をするのではなく、数学的に正しく表現できているか、議論不足が無いか判断して採点することが必要だと思いますし、無意識のうちに自分自身も形式的な採点をしていないか、客観的に見直していきたいと思います。

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