高校数学と大学数学のギャップについて声を大にして言いたいこと

 高校数学まで得意で好きだったから数学科に入ったのに、大学数学は難しくてつまらないという人はかなり多いです。そのように感じた理由として、「大学数学は高校数学の延長だとイメージしていたら全く違かった。高校までに良く扱われるものより複雑な初等関数の積分や漸化式を解く問題などを大学でも勉強すると思っていたら、大学の数学は抽象的な証明ばかりだ。」ということを言われます。そして、そのようなことをいう人はたいてい「高校までの数学が好きだという理由で数学科に入らない方が良い」とも言います。

 なぜ、そのような声が上がってしまうかと言うと、「高校数学を習得するまでの過程で数学の本質を見いだせなかったから」だと思います。高校と大学とでは確かに習う内容が全く違う、違うけども数学である以上本質は同じはずです。「数学とはどんな学問なのか」「数学は何を目指している学問なのか」「数学の本当の面白さはどこにあるのか」という数学の本質にせまる問いに対する答えが、高校卒業段階でよく分かってなかったことが原因で、大学数学の難解さに屈してしまうのです。これらの問いに対する答えを自分なりに持ち、数学に対する正しい価値観を持っていれば、たとえ大学数学を高校数学の延長だと思っていても、ギャップによって混乱することはそうないはずです。だから、本当の原因は大学数学のイメージを間違っていたことではなく、高校卒業段階までに数学の本質を見いだせなかったことにあります。

 だから、「数学とはこういうものです」と言うのを、正しく、かつ中学生や高校生にも分かるように伝えていくのが私たち数学教員の使命であり、数学そのものの考え方を、じっくり時間をかけて理解させていく必要があります。数学の本質を生徒が見出せるような授業が私自身出来ているかと考えると、まだまだ、本当にまだまだです。

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