大学で数学を専攻するうえで大切なこと

　年末年始は、出来る限り数学を鍛えようかな。本当は、大学数学を勉強したいのですが、それよりも今の自分にとっては数学の問題を解いている時に凡ミスをしない力をつけるべきなのです。最近はBlogの更新ばかりで勘違いしている方もいるかもしれませんが、本来このページは代数学・解析学・集合位相など大学数学の内容を載せていくのがメインですからね。

　今回の記事はずっと書きたかった内容でした。大学の数学科では「高校まで数学が得意で好きだったのに、大学の数学は難しくてつまらない・数学を勉強している気がしない」という人が多いように感じます。そうならないために大切なことは何か、個人的に思うことを挙げていきます。

・数学がどのような学問かを理解していること

　これが一番大切だと思います。例えば、「2つの辺が等しい三角形を二等辺三角形とよぶと、二等辺三角形は2つの角が等しい」と言うように、数学は「Aを〇〇と定義すれば、Aは□□という定理がある」ということを主張していく学問です。そして、その主張が正しいことを確かにするのが証明です。定義は、いわば「ルール」であるので、定理と違い導けるものではありません。このことが分かっていれば、「定義をおさえる」ことの重要性も分かるはずです。大学数学の証明問題が分からないという人が、問題の中に出てきた数学の用語の定義も分からないまま悩んでいることは少なくありません。そのような状態では間違いなく理解できません。「〇〇となることを証明せよ」という問題形式で、〇〇となるための十分条件を用いて証明できるものもあるかもしれませんが、〇〇の定義が分かっていなければ、自分自身で果たして何を証明したのか、よく分からないはずです。数学は「Aを〇〇と定義すれば、Aは□□という定理がある」ということを主張していく学問なのだから、定義をおさえることが重要だと分かっていることがとても大切です。

・どんな定理や性質を使っているか意識しながら問題を解くこと

　これもとても大切です。高校数学までは、証明問題より求答問題（答えを求める問題）の方が多いかもしれません。すると、「一番大切なのは答えを求めること」だと勘違いされやすいのですが、証明問題でも求答問題でも、大切なのは結論に至るまでの過程であり、違いは結論が分かっているか否かだけです。大学入試数学は、高校入試数学よりも過程を記述させることが多いと思うので、過程を書く練習もするはずです。その時、どんな定理や性質を使っているか、意識することが大切です。それを高校の段階で意識できれば、大学数学とのギャップに大きく苦しまないはずです。中学校、高校、大学のいずれであっても、数学の本質は変わりませんから。

・定理の適用条件（成立条件）を大切にすること

　正確な議論をするうえで大切です。例えば、相加平均と相乗平均の大小関係(a+b)/2≧√abが成り立つのは、a,b≧0のときです。これは覚えている人が多いかもしれません。では、「2つのベクトルa,b（普通は文字の上に→がつきます）に対して、a･b＝0⇔a⊥b」が成り立つ条件は分かりますか？それは、|a|,|b|≠0です。これは、内積a･bの定義を考えれば当たり前ですが、(2つのベクトルの内積)＝0と2つのベクトルは垂直が同値であると議論するには、|a|,|b|≠0を確かめる必要があります。その他にも、「{an}と{bn}が収束するとき」、lim(an＋bn)＝liman＋limbnであることなども注意したいです。

ここからは、モチベーションについてのことです。

・理解できない苦しみを愛せること

　偉そうにこのような記事を書いている私ですが、特別数学が出来るわけではありません。よほど頭の良い人でない限り、大学数学を勉強していれば、そう簡単に理解できない部分は出てくるでしょう。その時に、毎回落胆していてはとてもやっていられません。「分からないからこそ楽しい」というくらいのモチベーションを持つことが大切だと思います。

・ふとした瞬間に数学について考えられること

　これは必ずしも必要な習慣ではないかもしれませんが、この習慣があるとかなりモチベーションが高いと言えると思います。大切なことは、意識的に考えようとするのではなく、無意識のうちに考えることです。

・数学者に対して畏敬の念を抱くこと

　この気持ちがあれば本当に数学が好きなのだと思います。定理や考え方の素晴らしさ、大切さを感じた人でないと、畏敬の念を抱くことは出来ないですからね。

　高校卒業段階までに、正しい数学を伝え、数学で本当に大切なことは何か理解させるにはどうすればよいか、これからも考えていきたいと思います。