中学・高校数学を厳密に議論する(三角関数の弧度法 編)

 高校3年生での数学の授業中のことです。何かの例題で, f(x)=x-cosxという関数について考える問題を解いていました。私はこの問題が全く分からずに先生の解答を待っていると、「〇〇君、解けましたか!?」と当てられてしまいました。「いえ、全く分かりません」と答えると、先生は少し驚いた顔をして、「あら、どこで分からなくなった?」と質問。そこで、「cosxのxには角度が代入されるはずで, するとx-cosxは(角度)-(値)の計算をすることになってしまう。角度から値を引くとは何事だ!」とブチ切れた(嘘です、丁重に質問した)ことがあり、強く印象に残っています。当時の私は、そもそもf(x)=x-cosxという関数の意味が分かりませんでした。

 数学Ⅱの三角関数で弧度法を導入していますが、あくまでsinθ, cosθ, tanθのθは角であり, 弧度法とはラジアンを単位とする角の表し方であるという説明にとどまっているように感じます。ところが、f(x)=x-cosxという関数を定義するにはこの解釈では無理があると思います。まずは、「円において、半径と同じ長さの弧に対する中心角の大きさを1ラジアンとする」という定義を出発して、実数全体の集合(=R)から角度全体の集合への写像x↦(x180/π)°を考えます(xラジアンは(x180/π)°)。cosは角度を-1以上1以下の実数に対応させる写像であることは数学Ⅰで習っています。Rから角度全体の集合へ写し、さらに-1以上1以下の実数全体の集合(:=R')へ写す写像、すなわちx↦cosxを合成写像として考えます。つまり、大切なことは、x↦cosxがあくまでRからR'への写像であって、角度全体の集合からR'の写像ではないと考えるということです。

 三角関数は実数を実数に対応させるものという認識は大切ですが、教科書の書き方では欠陥があるように感じます。いずれ、当時の私と同じような疑問を持った生徒に、分かりやすく説明できる方法を考えておきたいものです。もちろん、高校生相手に「写像」なんて説明はできませんが・・・

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